シンポジウム・研究会
第12回包摂型社会研究会・第6回エスニックコミュニティ研究会

Posted at : 2016-12-07


 本研究会は、都市研究プラザ特別研究員の自主的な研究企画として実施する研究会である。経済や社会のグローバル化が進展する中、雇用構造の脆弱化・福祉の軟弱化・安定した住まいやコミュニティの形骸化が一層進んでおり、それらによる社会集団や特定の地域が社会的不利に陥りがちな傾向が危惧されている。そこで、本研究会は、「社会的包摂」を切り口として研究や実践活動に取り組んでいる、若手研究者の研究成果の実践現場への応用を検討し、新たな理論や実践モデルへの軟着陸を試みる機会とするとともに、「包摂型社会」の有り様を突き詰めながら現代の都市社会に潜む社会的排除問題に立ち向かう、時代の最先端を切り拓く研究者の育成の場に資することを目的とする。第12回は、「「イタリアにおける文化間メディエーターの役割:制度化された活動を事例として」をテーマに彌吉惠子(大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程、都市研究プラザ特別研究員)氏による報告を基に、議論を行う。
■概要
 昨今、移民急増で、移民の為の公共サービスのあり方が模索される欧州において、イタリアでは、いわゆるコミュニティ通訳とは異なる「文化間メディエーター」(以下、「メディエーター」)と呼ばれる人々が活躍している。メディエーターの役割は、 移民と公共機関が「出会い、関係を構築できるよう促す事」(Bertolini 1996:342)であるが、実際には正規雇用ではなくオンコール労働が蔓延していることもあり、従来の研究では、移民とサービス提供者の間に一時的に「介入」するメディエーターの活動のみが主に取り上げられてきた。そこで本研究では、医療機関の一員であるメディエーターの制度化された活動を調査し、メディエーターが「介入」と「病い」*への対処、すなわち「ケア」も行っていることを明らかにした。
*人間に本質的な経験である症状や患うこと(suffering)の経験。(Kleinman 1988:3=2015:4)

主催:包摂型社会研究会・エスニックコミュニティ研究会
日時:2016年12月27日(火)18時30分~20時30分
場所:大阪市立大学梅田サテライト107教室
参加費:無料